福袋の『裏側』 ~賢く、楽しく買う~

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『得』か『損』か

お正月のセールといえば、「初売り」が主な専門店やショッピングセンターの各店舗で賑わいを見せる。

そして、毎年、必ずと言っていいほど目にするのが、各企業が力いっぱいに販売する『福袋』だ。

この福袋、実際のところ、客側、つまりは購入者は『得』をしているのだろうか。

はたまた、損をしてはいないだろうか。

数ある福袋から、近頃の傾向を調査してみた。

 

購入者の心理

まず、注目しておきたいのが、福袋の定義だ。

そもそも福袋というのは、「袋」と名の付く商品だけあって、袋に入っているものが元来の始まりである。

ほかには、中身の商品形態や量などの都合により、箱状のものも登場する。

 

そして、次に確認しておきたいのが、そのコンセプトだ。

福袋という商品は、もともと春から夏、秋から冬へと、一年の営業を終え、その一年ものあいだ溜めに溜めた不良在庫を処分する側面も合わせ持つ。

これは、どういうことかと言うと、一年中営業してきて、販売努力を重ねたが、どうしても売り切ることができなかったため、やむを得ず元日の初売りセールで安売りしてしまおう、という企画なのだ。

そして、袋には封をしておき、中身に何が入っているかは買ってからのお楽しみ、というゲーム的要素も含まれていた。

 

しかし、買う方も色々考えて買っている。

価格や中身の質、ひいてはそもそも福袋として買う意味が有るのか無いのか、など冷静に現実的な視点で精査する熟練者も存在する。

もちろん、売る側も負けじとそれなりの工夫を凝らす。

 

その工夫とは、いかなるものだろうか。

それは、以下のとおりだ。

売る工夫としては、本音である「在庫処分」の意は決して表に出さず、建前として「お買い得な詰合せ商品」としよう。

ということなのだ。

近頃では、福袋の定義は崩され、中身が見えるものや、中身を明示するものさえ登場している。

これは、本質的な「得なのか、得でないのか」という一点に絞られる理由からだ。

 

だが、お買い得か、お買い得でないかは、実際に購入する客が決めることだ。

ならば、購入者に対して「お買い得に感じる詰合せ商品」にしよう。

というように発想を変化させたのだ。

 

つまり、福袋という商品は、正月セールの波に便乗して、お買い得に感じるか感じないか、という視点に着眼点を置かれることとなる。

売る側は、『いかにお買い得だと感じさせるか』に力を注ぐことになる。

裏を返せば、大してお買い得ではないにしろ、客がお買い得だと感じるような商品を陳列できれば、勝ちという訳だ。

 

つまるところ、福袋は、「お得に買い物をしたい」という購入者心理に訴求する、非常に心理的要素の高い商品なのだ。

とはいえ、新年のお祝いムードの中、気分も新たに、「新年の恒例行事のように、または何か記念や思い出として福袋を買っておきたい」という、年初めには福袋を買わないと正月休みを過ごした気にならない、といった人も一定数いるだろう。

『買う』という忖度

近頃、よく目にする福袋の中身の内容としては、商品そのものが入っているのではなく、商品の割引券や引換券を封入するケースが目立っている

これは、商品そのものが入っている場合であるが、とくに店舗でも通常販売している商品が入っていると、購入した客は「実際の価格よりも安く買えたかどうか」に着眼点を置くことになる。

これに対し、逆に、商品そのものではなく、割引券や引換券が入っている場合、「後日に必要となったとき、実際に購入するよりも安く買うことができる」ということになる。

 

ここで、注意が必要である。

この割引券や引換券は、ちょっと発想を変えれば「回数券」にも似てはしないだろうか。

バスの回数券や、銭湯の回数券のように、まとまった回数分を一度に買えば、割安で購入することができる、というシステムだ。

これは、売る側にとってみれば、今後リピーターにつながるかどうか不安な毎日なのだが、まとまった分を回数券として買ってもらえれば、リピーターとしても確実に確保できたも同然なうえ、「その間の売上も約束された」ということになる。

 

そして、ほとんどの企業が、この回数券ならぬ引換券に「有効期限」を設けている。

売る側は、あわよくば「引換券の利用が無ければ、その分の原価は0円で販売することができた」ということに等しい。

さすがにそんなあざとい考えは無いのだろうが、実際に利用がない場合は、そういうことになる。

 

この引換券が入った福袋は、客の心理を突いた「数字の魔術を使った」商品戦略なのだ。

 

いかにお買い得だと感じる商品を並べられるか。

これが、売る側が考える本音であり、『裏側』の戦略なのである。

 

福袋として、まとまった量を買ったとしても、それを使わなかったり、使いそびれたり、そもそも利用しなかった場合などは、実質的に「損をしている」ことになるのだ。

 

近年、消費者の思考は、ますます必要なものだけを購入するような現実的な思考になってきている。

無駄なものは購入することはないのだ。

 

数百円や数千円の、一時的な、戦略的なお買い得感が、本当に初売りセールで必要であるか否かは、よく考えて行動したいものである。

 

とはいえ、せっかくのお正月休み。

なんとなく気分も新たに、お正月セールの波に乗っかるのも悪くはないだろう。

楽しむのに、理由なんか必要ない。

お祭りというものは、そういうものだ。

人にはそれぞれ価値観があるし、なにが楽しいかは、その人次第である。

楽しいお正月休みを過ごすことができれば、なによりだ。

NORTHMAN

趣味:煎餅(米菓)の食べ比べ 得意なこと:ひとり遊び 愛読書:JAF MATE 好きな食べ物:季節全般のフルーツ

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