【実食比較】さくらんぼ7種食べ比べレポ

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赤い宝石とも呼ばれる初夏の味覚「さくらんぼ」。初夏の時期でも出回る時期が短く限定的であり、味わえる期間が少ないことから、八百屋やスーパーに並んでいるのを見かけると、思わず手を伸ばしてしまう。一口サイズで食べやすいのも魅力的だ。皮が薄く、糖度が高い果物ということもあって、とても傷みやすく、さまざまな果物がある中で最も日持ちがしづらい果物の一つであろう。

さくらんぼの歴史は古く、紀元前より食べられていた記録も残っているようだ。もともとの品種はヨーロッパや北西アフリカ、西アジアに自生しているバラ科の植物である。日本で食されるさくらんぼのほとんどが山形県産であり、全国の収穫量の7割を占めているのだが、一部は山梨県や北海道、青森県や秋田県などでも栽培されている。

フルーツ狩りと言えば、いちご狩りと並ぶ人気ランキングに入るのがさくらんぼ狩りだ。ほのかな酸味がありながらも甘みが強い味わいで、何個も食べられるのが人気の理由でもあろう。

紅秀峰(山形県産)

つやつやして煌びやかな一粒一粒が眩しい。これほどまでに一粒の存在感がある果物がほかにあっただろうかと思うくらいの輝きだ。さくらんぼと言えば代表的な品種は「佐藤錦」を思い浮かべるだろう。その「佐藤錦」と「天香錦」という品種を交雑させて生まれた紅秀峰。そんな生い立ちからも、その味わいに期待が膨らむ。さっそく頂いてみよう。

噛んだ瞬間に甘い果汁が広がってきた。酸味が少なく、柔らかな食感と優しい香りが癒しのハーモニーを奏でる。まさに宝箱から出てきた宝石だ。食べるのがもったいないくらい美味しい。かといって何日も冷蔵庫に入れておいて、気づいたときには傷みはじめているといったことにならないように、食べ頃のうちに頂きたい。一般的な収穫時期は、6月下旬から7月中旬頃とされているが、今回購入したものは5月中旬に八百屋に並び始めた初物を待ってましたとばかりに躊躇なく購入した。14粒で107グラム。味は申し分ない絶品だ。

紅さやか(山形県産)

色濃く真っ赤に染まった宝石は山形県産の「紅さやか」。果皮の艶が眩しいくらいに輝いている。一見すると、濃厚な味を想像してしまう重厚感あふれる色彩のビジュアルだが、その味わいはいかに。高まる期待とともに、さっそく頂いてみよう。

まず感じたのは爽やかな酸味と優しい甘みだ。それほど強い酸味ではないが、紅秀峰と比べるとややすっきり感のあるさくらんぼだ。甘みは決して弱くはないが、甘すぎずにさっぱりと頂ける味わい。見た目の濃い赤色からは、強い味わいを想像していたのだが、実際に頂いてみるとそのライトな味わいが初夏のやんわり暑い季節に嬉しい食べ心地だ。一般的に、糖度や甘さの強さがフルーツの価値観を決めるというある一定の要素は確かにあるかもしれないが、フルーツの楽しみはそれぞれの品種が持つ個性だ。

そのなかでもすっきり感や爽やかな味わいを演出する酸味もひとつの価値観であろう。甘さだけでは逆に飽きてしまうし、くどい味わいになってしまう。とかく甘さが優先されがちな傾向があるが、酸味もそれと同等に評価されて良い要素であろう。出回る期間が短いさくらんぼ。旬というものは季節感を存分に味わえる絶好のチャンスだ。生産者の絶えまぬ努力やご苦労に感謝して一粒一粒を味わいたい。

佐藤錦(山形県産)

言わずと知れた国内最高級品のさくらんぼ「佐藤錦」。ほどよくグラデーションがかかり、「赤いルビー」という名にふさわしいその味わいは安定の品質だ。佐藤錦の生みの親は、佐藤栄助氏という人物なのだが、当初は「出羽錦」という名称で登録しようと試みたとのこと。しかし、佐藤錦の品種改良にあたって相棒的存在であった岡田東作氏により「開発者の名前を入れた名称にすべきだ」という強い押しにより、佐藤錦という名称に決めたという開発秘話エピソードも存在する。さくらんぼは、とにかく日持ちがしづらく傷みやすい果物だ。購入してからは冷蔵庫で保管していても数日で傷みが始まってしまう。常温に保管していたならその速さはあっという間だ。

栽培にあたっての気象条件や管理も並大抵のものではないし、収穫後も枝の手入れをしたり肥料を与えたりと、一年を通して面倒をみなくてはならない手間のかかるフルーツだ。だからこそ、果樹園の宝石「赤いルビー」と言われる所以なのも頷けるところだ。

味は、爽やかな酸味と優しい甘みが絶妙だ。開発者や生産者、消費者の手にわたるまでに関わってくれた人たちの苦労や努力を考えると、一粒に込められた重みを改めて感じる。また一つ、また一つとさくらんぼを食べていると、日本の四季に感謝したくなるそんな瞬間にも思う。いま我々が口にすることのできる食べ物は多分にある。そして様々な品種があり、選んで購入することができるという選択肢さえも与えられている。それだけでも贅沢なのだが、一つの品種を作り上げるのにその人の一生である人生を賭けてまで取り組んで来られた姿勢には、作品の味わいだけではなく、完成するまでの様々な困難や苦労や努力が入り混じった背景にあるドラマにまで遡って想像すると、深い敬意と偉業の大きさに圧倒される。豊かな時代に忘れかけた何かを頂いた気がする。

佐藤錦(山梨県産)

同じ佐藤錦ではあるものの、産地が異なると味わいや風味・食感といったエレメントも異なるのだろうかという検証も兼ねて購入してみた。購入した時期にもよるのかもしれないが、今回購入した山梨県産のさくらんぼは、とにかく一粒が大きいのが印象的だ。計ってみるとその重さは1粒あたり8.6グラムだ。調べてみると、佐藤錦の大きさは、8グラムから12グラムまでと意外と広範囲だ。しかも今回購入したサイズは、公表されているレンジからすると小さ目に位置するというのだから二重の驚きだ。

実際に頂いてみると、粒の大きさを実感したのだが、12グラムの個体となるとその大きさも約1.5倍となるわけだから、その迫力も計り知れない。ぜひ大粒の佐藤錦にお目にかかりたいものだ。

味わいや風味の点では、申し分なく佐藤錦だ。品種名のように、まるで砂糖のように甘い。風味も食感も山形県産のと比べても、何ら大差はないように感じた。ただ、見た目の艶感といえば、購入した一点のみの比較になってしまうが、山形県産のほうが煌びやかな艶があり、山梨県産のほうはマット系な風合いだ。画像の撮り方に問題があると言われればそれまでなのだが(泣)

同じ品種で産地違いの検証としては、味や食感など基本的な味わいとしてはほぼ変わらないという結果となった。それぞれの産地で育てられた品種も、それぞれの生産者の思いが込められていて、それぞれに価値がある。大きな違いはなくとも、微妙な加減で楽しめる「違い」もまた楽しみでもある。逆に小さな違いだからこそ、その違いを感じられる楽しみがあるのではなかろうか。

チャーミーチェリー(秋田県産)

アメリカンチェリーの仲間かと思うようなのネーミングなのだが、じつは佐藤錦のひとつをブランド化したようだ。さくらんぼの産地として上位にある秋田県が、気候や土壌がさくらんぼの栽培に適していることや、生産者の高い栽培技術とたゆまぬ努力をもとにブランド化したさくらんぼとのことである。糖度が20度を超えるさくらんぼとして、日本一の品質と評されている逸品のようだ。期待に胸を躍らせながら、早速頂いてみたい。

まず、印象的なのがその色合いだ。佐藤錦と言えば、黄色や薄紅色のグラデーションが映える色づきなのだが、このチャーミーチェリーは赤に近い色づきだ。見た目の色からして甘そうなのが伝わってくる。一粒の大きさは、7.5グラムと小ぶりサイズ。6月下旬に購入したのだが、1パックで198グラム入って980円だった。価格的には、一般的な佐藤錦とさほど変わらないだろう。

実際に頂いてみよう。注目の甘さは、たしかに甘い。酸味も少なく、甘さが際立つ逸品だ。食感は、サクサクっとしていて気持ち固めな感じもするが、固いというほどでもなく、柔らかめというよりは固めだろうかという程度だ。見た目の色合いと甘い味わいでブランド化した佐藤錦である理由がなんとなく伝わってきた。個人的には、やや甘さが強すぎる気もするが、ブランドとして確立するのに糖度の高さは要素の一つとして優れているのだろう。佐藤錦の中にもブランド化された逸品があったことに新たな発見であった。

ビング(アメリカンチェリー)

アメリカ西海岸で収穫されるアメリカンチェリー。その種類もいくつかあるのだが、「ビング」は日本に輸入されるアメリカンチェリーの9割を占める。果肉はしっかりとしていて、日本のさくらんぼと比べると硬めだ。濃い赤の色味も海外産ならではといった感じだ。大きさも日本のものと比べると一回り大きいのがわかる。ぷりっとしている形が可愛らしい。

今回購入したものは、5月中旬の出始めのものを購入した。一般的に八百屋やスーパーで並ぶ時期は、5月上旬頃からカリフォルニア産のものが出回り始め、6月中旬頃にワシントン州やオレゴン州のものに切り替わり、7月下旬頃まで手に入れることができる。ワシントン州のビングは、大粒で味わいも良く、評価が高いことで知られているようだ。

実際に頂いてみよう。食感はやはり見た目通りしっかりしていて、サクサクとした食感に近い。酸味は少なく、ストレートな甘さを感じる味わいだ。27粒で206グラム。一粒一粒に食べ応えがあり、存在感のあるさくらんぼである。

レイニア(アメリカンチェリー)

アメリカ産にしては色味が控えめで、どちらかというと日本のさくらんぼに近い黄色みがかった色をしている。大きさは、やはり海外規格の大きめサイズだ。気温や雨風の影響を受けやすく、熟した果実の3分の1が鳥に食べられてしまうことから、手頃な価格が魅力の一つでもあるアメリカンチェリーではあるものの、レイニアは特別高価になっているようだ。

原産地はワシントン州のほか、カリフォルニア州やオレゴン州である。レイニアもワシントン州のものが美味しいことで知られているようだ。収穫の時期は、6月下旬から7月中旬であるが、日本に入ってくる時期は7月中旬から下旬の傾向から考えると、日本で手に入れることができるのは、特に限られた時期というのがわかる。幻のさくらんぼとも言えよう。八百屋やスーパーで見かけることができたら、迷わず手に入れたい品種だ。

実際に頂いてみよう。味は、甘みが強くて酸味も少なく、日本のさくらんぼによく似ている。一粒が大きいので、食べ応え感があるのに加え、クリーミーな柔らかな味わいが特徴的だ。食感もシャキシャキというよりは、なめらかな舌触りだ。これはたしかに鳥も食べない手はないだろう。一度食べたら、レイニアの美味しさに夢中になってしまうのも無理は無いとわかる。

NORTHMAN

趣味:煎餅(米菓)の食べ比べ 得意なこと:ひとり遊び 愛読書:JAF MATE 好きな食べ物:季節全般のフルーツ

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