桜と和菓子の融合 ~桜のようかん~

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春は、昼下がりになると上着がいらないくらいぽかぽか陽気の日があるかと思えば、コートやジャケットでも羽織ってないと、とてもじゃないが寒くてぶるぶる震える朝晩のような一日の温度変化が著しい季節だ。そんな暖と寒が交わるどっちともとれない日は、服装の選択ひとつとってもまごついてしまうが、ほっと一息つきながら和菓子と温かい濃いめのお茶で季節を感じるのも贅沢な時間だ。そういう心に染みる安らぎの時間は、人生にとってなにより貴重で大事にしたい。

桜といえば日本を代表する花だが、和菓子も日本の象徴的なフードだ。桜と和菓子。きってもきれない組み合わせだ。この春めいた季節に、桜にまつわるお菓子を追ってみた。

日本を代表する花とお菓子

羊羹といえば、真っ先にお茶のお供を思い浮かべるだろう。もともとは甘いお菓子ではなく、その歴史は鎌倉時代から室町時代に遡る。南北朝時代の中国で作られた羊のスープが発祥とされているのだが、このスープが冷えると羊肉のゼラチン質が溶け込んだスープが煮凝りのように固まっていたことが原型のようだ。当時の禅僧によって中国より日本へ伝えられたその羊羹は、肉食が戒律によって禁じられていたことから、羊肉の代わりに小豆を代用して作られたものが日本の羊羹の原型となっている。それは小豆と小麦粉または葛粉と混ぜて作る蒸し羊羹であり、そこから進化を遂げて今の寒天で固める製法に至っている。

そんな歴史深い羊羹なのだが、「桜のようかん」なるものを見つけたので有無を言わさず購入してみた。製造者は、有限会社溝屋という東京都足立区にあるメーカーだ。ちなみにこれは世界中から集めた珍しい食材やコーヒー豆を販売しているカルディで購入したものだ。3個入りで税込み248円。

桜の花びらと、筆で描いたような字体で構成された和デザインの包装を開けると、桜のようかんが姿を現した。

個包装されていて、1個当たりが38グラムの一口サイズなのも食べきりサイズで嬉しい。この段階で、桜の葉の塩漬けが練り込まれているのが見てとれる。期待に胸を膨らませてさっそく実食だ。

なにやらご丁寧に開け方の説明書きがある。指示される通り矢印の部分をつまんでひねりながら横にひっぱってみた。

見事にきれいに開封できた。そしてさらに特筆すべきは、開封した包装が切り離されずにくっついていたことだ。これは食べ終わった後も手を汚さずに捨てられる仕様だ。そんな細かいところの気遣いも和ならではの製品なのだろう。

実際に食べてみると、インパクトある桜のパッケージデザインに期待を寄せすぎたせいか、思ったほど桜の風味は強くなかった。どちらかというと優しい味わいだ。万人に受け入れられる味付けなのかもしれない。ほのかに感じる塩味と甘さ控えめな仕上がりになっているが個人的にはもっとガツンと桜の葉の塩漬けのソルト感があったほうが好みかもしれない。しかしながら、春という季節そのものを考えてみると、寒い冬が終わりゆっくりと新たな命が芽吹く生命力と、麗らかで柔らかな温もりを与えてくれる季節感であるなら、優しい味わいも春らしさを表現していると言えるだろう。桜味が苦手な方でもこれなら春を感じられる桜のお菓子として楽しめるのではなかろうか。

 

NORTHMAN

趣味:煎餅(米菓)の食べ比べ 得意なこと:ひとり遊び 愛読書:JAF MATE 好きな食べ物:季節全般のフルーツ

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