春を味わう焼き菓子 ~葉山かすてーら らんとう桜~

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まだ肌寒い2月下旬から3月にかけて時折見せてくれる春の陽気は、あともう少し寒さを楽しみたいという冬への名残惜しさと、まだかまだかと心待ちにする春への期待との間に生じる「季節の変わり目」を味わうことができる貴重な時期と言える。この寒と暖が入り混じる融合的な季節感は、四季の移ろいを実感できる日本ならではの価値であろう。ライフスタイルにも細かな変化がある。温かくなれば冷たいものが食べたくなるし、寒ければ温かいものを欲してしまう。食の変化も楽しみたくなるそんな心躍る季節に、春を感じる一品を見つけた。

葉山かすてーら らんとう桜

時は遡ること明治後期。夏目漱石が神奈川県三浦郡葉山町にある「葉山日影茶屋」を訪れていた際、その八代目庄右衛門がカステラを焼いてもてなしていたそうである。材料に卵と砂糖を使っていて、程よい甘味に仕上がったこの焼き菓子は「卵糖」と呼ばれ親しまれていた。当時の味もそのままに、歴史を感じる焼き菓子として今に受け継がれている。

丁寧に包まれている箱の表面には葉山かすてーらのリーフレットが添えられている。

やさしく箱を開いていくと、柔らかい紙に包まれた白い箱が出てきた。3か所に空いている丸い小さな穴は、カステラが蒸れないように適度に空けてある空気穴だろうか。

白い箱を開けると、さらに丁寧な包装が施されていて、純白の和紙に包まれている。

カステラを崩さないようにやさしく和紙をめくると、淡いピンク色の生地を焼き上げた葉山かすてーらが姿を現した。

10等分にカットされているところにも、食べやすさへの配慮がうかがえる。カットする手間も省け、嬉しい心遣いだ。

手で持つとふんわり柔らかな感触が優しい味わいを連想させてくれる。実際に頂くと、しっとりと甘く焼き上げられた生地に、ほんのり桜の風味をまとわせた味わいだ。小ぶりなサイズ感でおしとやかな食べ応え感もまた、もう一口と誘われる感覚だ。甘くやさしい後味が春らしさを感じる。

底面のクッキングシートをはがすとザラメがついていて味の変化もあり、最後の一口まで楽しめる。桜が咲いて散ってしまうとあっという間に初夏へと変わり、春という季節はとても短い。そんなはかなくも一瞬で通り過ぎてしまう春を楽しめた焼き菓子と出会えた。来年の春もまた必ず食べたい思いでの逸品となった。

NORTHMAN

趣味:煎餅(米菓)の食べ比べ 得意なこと:ひとり遊び 愛読書:JAF MATE 好きな食べ物:季節全般のフルーツ

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