花粉たちのお祭り

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春に舞い踊る

ついにまたこの季節がやってきた。冬も佳境にかかってきた2月、まだ寒さの厳しい晩冬に春の訪れをまだかまだかと待ちきれず、見切り発車もいいことにそのいたずらっ子たちは無邪気に踊り、解き放たれたたんぽぽの綿毛のように舞い始める。花粉症の方にとっては実にやっかいな季節だろう。冬の終わりもカウントダウンが始まり、待ちわびた春がやってくるのを実感できる季節である一方で、なんとか少しでも被害を最小限にとどめたいという切実な願いとともにその舞は日一日と盛り上がりを見せてくる。

東京に上京して早20年、それまでは花粉症とは無縁の暮らしをしてきたものだが、今ではいかに花粉たちと共存し、花粉をこそ受け入れるべく向き合って来たか、花粉生活20年の軌跡をまとめてみた。

花粉症のはじまり ~東京一年目の春~

なんとなくくしゃみが出るな~と花粉症の事など微塵も疑うことなく暮らしていた東京生活一年目。今思えば、あれは確かに花粉症の症状だ。「単に埃っぽいのかな、この部屋」程度にしか思っていなかった当時、住んでいたアパートは大型車の駐車場すぐ裏にあり、舗装されていない砂埃たっぷりの風が窓の隙間から入ってきているのではないかと疑うレベルであった。今思えば、あの頃から花粉症を患っていたのだ。

 

その翌年も春になるとくしゃみを連発してはいたが、「また駐車場の埃か・・・」程度に楽観視していた。花粉症という概念自体が無かったのだ。そして、東京生活も3年目あたりの頃、やはり春になるとくしゃみを連発した。そして、さらには目も痒くて痒くて仕方なく真っ赤になり、顔がパンパンに腫れているかのような症状が出るようになり、コンタクトレンズはしていられず、眼鏡をしていないと外出できないほどになっていた。

 

ようやく気付いたのである。「花粉症というやつではないか」

 

鼻詰まりが酷く、鼻での呼吸が困難を要していた。どうしたものかと解決の糸口を探るも、なかなか良い手段が見つからない。そんなとき、コンビニで目についた品があった。見れば、なんでも喉や鼻に効くEXハイパーミント味だという。とりあえず「ホールズ」という飴を購入した。パッケージにも「のど・はなスッキリ!!」と書いてあり、花粉症に苦しむ難民にとっては、藁をもすがる思いで飛びついた。

 

実際に一粒なめてみた。

 

素晴らしいではないか。確かにのどとはながスッキリする。次第に鼻が通るようになってきたのを感じ、やり場のない花粉ストレスが一気に解消に向けて動き出した。効果てき面だった。飴一粒でこれほどまでに改善するとは、驚きであった。どうしてもっと早くにホールズと出会わなかったのだろうか、とこのとき初めて悔恨の念を抱かずにはいられなかった。

しかし、この飴の効果は儚い夢のようにすぐに消え去ることとなる。ホールズをなめてる間は良いのだが、なめ終わるとその効果もすぐに切れてしまう。これでは、活動している間ずっとなめ続けなければいけない。それもなかなか難しい状況がある。

こうなったら、医者に診てもらうしかない。

さっそく、病院へ行き薬を処方してもらった。やはり、そこは薬の恩恵に預かることができた。薬の力は絶大だと改めて気付いたのもこの瞬間(とき)であった。眠くなる副作用はあるにしろ、花粉症の症状が緩和されるのには、なによりの安堵を覚えた。やっぱり困ったときは医者に診てもらうのが一番近道のような気がした。

花粉症と共存した20年

それからというもの、春になるとかならず花粉症の薬を処方してもらい服用することにしていた。たまの眠気が襲ってくることも度々あったが、花粉攻撃の被害に比べれば大したことはない。

花粉対策ということで、さまざまな食品も試してみた。納豆やヨーグルト、乳酸菌飲料など花粉症に効くと聞けばなんでも手を出してみた。その甲斐あってか、花粉の抗体ができたのか、はたまた花粉そのものに慣れてきたのかは定かではないが、年々症状が楽になってきている。

 

いまでは、くしゃみが少し多くなる程度で、とくに目が痒くて痒くて真っ赤になるとか、顔がパンパンに腫れるほどむくむ等の辛い症状はかなり緩和されている。花粉症の薬を飲まなくとも、問題ないくらいにまで体質改善がなされた。もしかしたら運が良いのかもしれない。気付けば鼻呼吸が苦痛だった頃が懐かしいほどだ。この域に達するまでに要した時間は20年。考えてみれば結構長い。人生100年時代と言われる現代でも、その20パーセントを占めている。とはいえ、また花粉症に悩むほどの辛い症状が出ないという保証もないだろう。

花粉にあらためて思う

花粉症の苦しく辛い経験をし、改善するまでに緩和した経験から、改めて『花粉』というものを考えてみた。花粉とは本来花のおしべから生産される繁殖の手段に用いるツールである。植物が育ち、緑あふれる大地を作ってくれる生命の源でもある。植物が育たなければ、日本はおろか地球全体が砂漠と化してしまうだろう。そういう意味では、花粉は無くてはならない存在なのかもしれない。多くの人たちにとっては、辛い症状を被ることになる存在かもしれないが、じつはそれ以上に我々の気付かないところで四季の連鎖の一翼を担っているかもしれない。

 

憎まれながらも日の目を浴びず、陰ながら黙々と人の役に立っている愚直な生き様は、人のそれよりも優れているかもしれない。誰にも気づいてもらえず目に見えない功績ほど、それが見い出された時には比類無い唯一無二の価値が評価されるのではかなろうかと思う。

NORTHMAN

趣味:煎餅(米菓)の食べ比べ 得意なこと:ひとり遊び 愛読書:JAF MATE 好きな食べ物:季節全般のフルーツ

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